機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

2021-01-01から1年間の記事一覧

【告知】『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』出ます

note.com 11/23(祝)の文学フリマ東京で『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』を頒布します。 今年完結した海外SF叢書〈未来の文学〉(国書刊行会)のファンブック的な同人誌です。見どころは叢書全レビュー、編者・翻訳者etc.の裏話満載エ…

BFC3 ジャッジ準決勝進出!!

BFC3 1回戦ジャッジをジャッジ|BFC ブンゲイファイトクラブ|note ジャッジを担当していたBFC3、なんと準決勝に進出することになりました。引き継ぎ頑張ります。 奇想小説ファンは、わたしの推し作品だけでも読まれるとよいかと思います。イチオシは川…

スラデック&ディッシュ共作解説

解説 人と作品 ジョン・スラデック&トマス・M・ディッシュ John Sladek with Thomas M.Disch 誌面が若干余ってしまったので、追加で解説を付すことにする。ジョン・スラデック(一九三七〜二〇〇〇)、トマス・M・ディッシュ(一九四〇〜二〇〇八)はとも…

告知(ハヤカワ文庫JA総解説PART3、BFC3ジャッジ、文学フリマ東京など)

www.hayakawa-online.co.jp SFマガジン12月号〈ハヤカワ文庫JA総解説PART3〉にて、・伊藤計劃『ハーモニー』・SFマガジン編集部編『アステリズムに花束を』・大森望&伴名練編『2010年代SF傑作選』の紹介を書いています。 個人的にはやはり『ハーモニー』評…

風化しないユーモア、超越する面白さとは?――ユーモアSFアンソロジー『グラックの卵』

グラックの卵 (未来の文学) 作者:ハーヴェイ ジェイコブズ 国書刊行会 Amazon 本書は〈ユーモアSFアンソロジー〉と謳われているが、果たして「ユーモアSF」とはそもそも何なのか? そこから考えてみたい。 編者の浅倉久志氏は過去に、「ユーモアSFの特…

『ゴーレム100』の超絶翻訳を原文と比較して検証してみた

ゴーレム 100 (未来の文学) 作者:アルフレッド ベスター 国書刊行会 Amazon アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』(100は本来べき乗表記)(渡辺佐智江訳、国書刊行会)は妙な本である。 ワイドスクリーン・バロックの大家・ベスターの持ち味である大風呂…

ジョン・スラデック『ロデリック』を読む――自閉症スペクトラムとして見るロデリック――

だれでも、どうふるまうかを知っているはずです。だれもが道筋を、考え方を持っています。(中略)でも私にはそのルールがまだはっきりとわからないのです。私には基本が欠けていたのです。――ヴォルフガング・ブランケンブルク『自明性の喪失』 アンネ・ラウ…

告知など2(ハヤカワ文庫JA総解説PART2とかぐやSF2選外佳作について)

www.hayakawa-online.co.jp SFマガジン2021年10月号〈ハヤカワ文庫JA総解説 PART2〉に、前号のPART1に引き続いて参加させていただいております。 今回の担当作品は、田中啓文『蹴りたい田中』と飛浩隆『象られた力』の2作でした。前者の奇抜な構成・装丁、…

〈未来の文学〉未刊行の、唯一無二のマッドSF――ジョン・スラデック『ミュラーフォッカー効果』

The Muller-Fokker Effect (Gateway Essentials Book 141) (English Edition) 作者:Sladek, John Gateway Amazon 年一刊行のSFムック本『SFが読みたい!』(早川書房)には毎号、各出版社による次年度出版予定のSF作品の告知欄がある。本作も、二〇〇…

黒い笑いと現世からの「脱出」願望――トマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』

アジアの岸辺 (未来の文学) 作者:トマス・M.ディッシュ 国書刊行会 Amazon トマス・M・ディッシュとは何者だったのか? 本書を読むと、その輪郭を掴みかけた刹那、また薄闇の中へとぼやけていっていってしまうような――そんな印象を抱く。 それはなぜか。表…

唯一無二の〈言葉の魔術師〉による短編集――ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』

デス博士の島その他の物語 (未来の文学) 作者:ジーン ウルフ 国書刊行会 Amazon 〈言葉の魔術師〉ジーン・ウルフ。その語りは騙りであり、その騙りのみが我々の灯りである。暗闇に照らし出され、浮かび上がる像は一面でしかない。ゆえに注意深く読むことが要…

逃避としての幻想が牙を剥く瞬間――ドゾワ「海の鎖」とウルフ「デス博士の島その他の物語」

海の鎖 (未来の文学) 作者:ガードナー・R・ドゾワ 国書刊行会 Amazon 〈未来の文学〉叢書の最後を飾るのは、名翻訳家にして名紹介者である伊藤典夫編アンソロジーである。 人間に擬態した異星人を巡るサスペンス「擬態」、全世界向けの広告としてヒロシマに…

「『海の鎖』刊行記念&《未来の文学》シリーズ完結記念トークショー」レポ

bookandbeer.com 《未来の文学》シリーズ完結記念トークショー@本屋B&B、行ってきました。途中から雷と大雨の音が聞こえてきて怖かったです。傘持ってきてなかったし!! 以下レポ。 ※注意:以下、基本的に敬称略だったり付けてたり。オフレコっぽい箇所(…

〈ハヤカワ文庫JA総解説 PART1〉に参加しました

www.hayakawa-online.co.jp 本日発売のSFマガジン8月号〈ハヤカワ文庫JA総解説PART1〉に参加しております。 担当作品はJA0016『宇宙のあいさつ』(星新一)とJA0030『アルファルファ作戦』(筒井康隆)の2作。読書体験のルーツみたいな作品を担当することに…

唖然とするような怪作と歴史的名訳との臨界点——アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』

ゴーレム 100 (未来の文学) 作者:アルフレッド ベスター 国書刊行会 Amazon 怪作である。真っ赤な表紙とぶ厚めの背表紙。過剰なまでのタイポグラフィと、ロールシャッハ・テストを思わせる不可思議な挿画たち。何しろ開始二〇ページ目から出てくるのがヘブラ…

著者の全てが表れた、奇想と寓意に満ちた神経症的初短編集――フリオ・コルタサル『対岸』

honto.jp しばしば処女作には作家の全てが表れるとされるが、フリオ・コルタサルもその例に漏れない。夭折した親友に捧げられた本短編集は、紆余曲折を経た後にお蔵入りとなり、コルタサルの死後(一九九五年)に出版されるまで幻とされていた作品集だ。 一…

創作とは、一種の「悪魔祓い」である――フリオ・コルタサル『八面体』

八面体 / 原タイトル:Octaedro[本/雑誌] (フィクションのエル・ドラード) / フリオ・コルタサル/著 寺尾隆吉/訳価格: 2420 円楽天で詳細を見る 人は変わらずにはいられない。コルタサルも七〇年代以降は政治活動に身を投じ、創作への熱意をそのぶん政治へ転…

現実認識を変えるために脳6つを要求する異星人を巡る、異色言語SF――イアン・ワトスン『エンべディング』

エンベディング (未来の文学) 作者:イアン・ワトスン 国書刊行会 Amazon バベルの塔の崩壊以来、言語の統一は人類の悲願である。だからこそ人類は、「言語」という謎めいた、しかしありふれたものについて学術的興味を抱き続けてきた。本作で下敷きにされて…

韓松初の英訳短編集 "Exploring Dark Short Fiction #5 : A Primer to Han Song" 感想など

中国SF四天王の一角にして、残雪に次ぐ中国ポストモダン文学の旗手としても名の挙げられる韓松。最近ちらほらと名前を聞く作家であり、先日出た現代中華SFのアンソロジー『時のきざはし』にて短編(「地下鉄の驚くべき変容」)が翻訳されたこともあり実際に…