機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョン・スラデック『ロデリック』を読む――自閉症スペクトラムとして見るロデリック――

だれでも、どうふるまうかを知っているはずです。だれもが道筋を、考え方を持っています。(中略)でも私にはそのルールがまだはっきりとわからないのです。私には基本が欠けていたのです。――ヴォルフガング・ブランケンブルク『自明性の喪失』 アンネ・ラウ…

告知など2(ハヤカワ文庫JA総解説PART2とかぐやSF2選外佳作について)

www.hayakawa-online.co.jp SFマガジン2021年10月号〈ハヤカワ文庫JA総解説 PART2〉に、前号のPART1に引き続いて参加させていただいております。 今回の担当作品は、田中啓文『蹴りたい田中』と飛浩隆『象られた力』の2作でした。前者の奇抜な構成・装丁、…

〈未来の文学〉未刊行の、唯一無二のマッドSF――ジョン・スラデック『ミュラーフォッカー効果』

The Muller-Fokker Effect (Gateway Essentials Book 141) (English Edition) 作者:Sladek, John Gateway Amazon 年一刊行のSFムック本『SFが読みたい!』(早川書房)には毎号、各出版社による次年度出版予定のSF作品の告知欄がある。本作も、二〇〇…

黒い笑いと現世からの「脱出」願望――トマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』

アジアの岸辺 (未来の文学) 作者:トマス・M.ディッシュ 国書刊行会 Amazon トマス・M・ディッシュとは何者だったのか? 本書を読むと、その輪郭を掴みかけた刹那、また薄闇の中へとぼやけていっていってしまうような――そんな印象を抱く。 それはなぜか。表…