機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

〈ハヤカワ文庫JA総解説 PART1〉に参加しました

www.hayakawa-online.co.jp 本日発売のSFマガジン8月号〈ハヤカワ文庫JA総解説PART1〉に参加しております。 担当作品はJA0016『宇宙のあいさつ』(星新一)とJA0030『アルファルファ作戦』(筒井康隆)の2作。読書体験のルーツみたいな作品を担当することに…

唖然とするような怪作と歴史的名訳との臨界点——アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』

ゴーレム 100 (未来の文学) 作者:アルフレッド ベスター 国書刊行会 Amazon 怪作である。真っ赤な表紙とぶ厚めの背表紙。過剰なまでのタイポグラフィと、ロールシャッハ・テストを思わせる不可思議な挿画たち。何しろ開始二〇ページ目から出てくるのがヘブラ…

著者の全てが表れた、奇想と寓意に満ちた神経症的初短編集――フリオ・コルタサル『対岸』

honto.jp しばしば処女作には作家の全てが表れるとされるが、フリオ・コルタサルもその例に漏れない。夭折した親友に捧げられた本短編集は、紆余曲折を経た後にお蔵入りとなり、コルタサルの死後(一九九五年)に出版されるまで幻とされていた作品集だ。 一…

創作とは、一種の「悪魔祓い」である――フリオ・コルタサル『八面体』

八面体 / 原タイトル:Octaedro[本/雑誌] (フィクションのエル・ドラード) / フリオ・コルタサル/著 寺尾隆吉/訳価格: 2420 円楽天で詳細を見る 人は変わらずにはいられない。コルタサルも七〇年代以降は政治活動に身を投じ、創作への熱意をそのぶん政治へ転…

現実認識を変えるために脳6つを要求する異星人を巡る、異色言語SF――イアン・ワトスン『エンべディング』

エンベディング (未来の文学) 作者:イアン・ワトスン 国書刊行会 Amazon バベルの塔の崩壊以来、言語の統一は人類の悲願である。だからこそ人類は、「言語」という謎めいた、しかしありふれたものについて学術的興味を抱き続けてきた。本作で下敷きにされて…