機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

《池澤夏樹=個人編集 世界文学全集》

フランツ・カフカ『失踪者』

※本稿は鯨井の執筆のものではなく、桃山千里氏によるものですが、特別な許可を得て掲載しています。 失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス) 作者:フランツ カフカ 白水社 Amazon はっきり言って、カフカというのは自分にとってよく分からん存在なので…

トマス・ピンチョン『ヴァインランド』

ヴァインランド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第2集) 作者:トマス・ピンチョン 河出書房新社 Amazon どこから説明してよいのやら。まず言っておきたいのは、ピンチョンは変な作家であるということだ。ノーベル文学賞候補でありながらも覆面作家を貫き通…

リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』

黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) 作者:リシャルト・カプシチンスキ 河出書房新社 Amazon ルポルタージュは文学か、と聞かれたらおそらくそうなのだろうと思うのだが、これまでの世界文学全集でそれに類したものが収録されていたという話は、不…

ミルチャ・エリアーデ『マイトレイ』

マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3) 作者:アルべルト・モラヴィア,ミルチャ・エリアーデ 河出書房新社 Amazon ミルチャ・エリアーデといえば、ルーマニア出身の二〇世紀を代表する宗教学者にして、傑作『ムントゥリャサ通りで』(法政大…

ウラジミール・ナボコフ『賜物』

賜物 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2) 作者:ウラジーミル・ナボコフ 河出書房新社 Amazon ナボコフを読む時はいつも敗北主義的というか、負け腰になってしまう。凝りに凝った文体、さりげないほのめかし、言葉の魔術師の異名をひけらかすかのような言葉遊…

短篇コレクションⅠ

短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) 作者:コルタサル他 河出書房新社 Amazon 実に周到なアンソロジーである。マジックリアリズムも、ポストコロニアリズムも、フェミニズムも、あるいはジャンルSFも、おおよそ「世界文学全集」を名…

「楽園」を追い求める二人の至る道と歴史――マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』

楽園への道 (河出文庫) 作者:マリオ・バルガス=リョサ 河出書房新社 Amazon この世で一番小説が上手いんじゃないか。バルガス=リョサの作品を読むたびに、そう思わされてしまう。とんでもない馬力と、繊細な詩情と、それを表現する筆力がひとりの人間に宿…