機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

《未来の文学》

【告知】『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』出ます

note.com 11/23(祝)の文学フリマ東京で『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』を頒布します。 今年完結した海外SF叢書〈未来の文学〉(国書刊行会)のファンブック的な同人誌です。見どころは叢書全レビュー、編者・翻訳者etc.の裏話満載エ…

風化しないユーモア、超越する面白さとは?――ユーモアSFアンソロジー『グラックの卵』

グラックの卵 (未来の文学) 作者:ハーヴェイ ジェイコブズ 国書刊行会 Amazon 本書は〈ユーモアSFアンソロジー〉と謳われているが、果たして「ユーモアSF」とはそもそも何なのか? そこから考えてみたい。 編者の浅倉久志氏は過去に、「ユーモアSFの特…

『ゴーレム100』の超絶翻訳を原文と比較して検証してみた

ゴーレム 100 (未来の文学) 作者:アルフレッド ベスター 国書刊行会 Amazon アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』(100は本来べき乗表記)(渡辺佐智江訳、国書刊行会)は妙な本である。 ワイドスクリーン・バロックの大家・ベスターの持ち味である大風呂…

〈未来の文学〉未刊行の、唯一無二のマッドSF――ジョン・スラデック『ミュラーフォッカー効果』

The Muller-Fokker Effect (Gateway Essentials Book 141) (English Edition) 作者:Sladek, John Gateway Amazon 年一刊行のSFムック本『SFが読みたい!』(早川書房)には毎号、各出版社による次年度出版予定のSF作品の告知欄がある。本作も、二〇〇…

黒い笑いと現世からの「脱出」願望――トマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』

アジアの岸辺 (未来の文学) 作者:トマス・M.ディッシュ 国書刊行会 Amazon トマス・M・ディッシュとは何者だったのか? 本書を読むと、その輪郭を掴みかけた刹那、また薄闇の中へとぼやけていっていってしまうような――そんな印象を抱く。 それはなぜか。表…

唯一無二の〈言葉の魔術師〉による短編集――ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』

デス博士の島その他の物語 (未来の文学) 作者:ジーン ウルフ 国書刊行会 Amazon 〈言葉の魔術師〉ジーン・ウルフ。その語りは騙りであり、その騙りのみが我々の灯りである。暗闇に照らし出され、浮かび上がる像は一面でしかない。ゆえに注意深く読むことが要…

逃避としての幻想が牙を剥く瞬間――ドゾワ「海の鎖」とウルフ「デス博士の島その他の物語」

海の鎖 (未来の文学) 作者:ガードナー・R・ドゾワ 国書刊行会 Amazon 〈未来の文学〉叢書の最後を飾るのは、名翻訳家にして名紹介者である伊藤典夫編アンソロジーである。 人間に擬態した異星人を巡るサスペンス「擬態」、全世界向けの広告としてヒロシマに…

「『海の鎖』刊行記念&《未来の文学》シリーズ完結記念トークショー」レポ

bookandbeer.com 《未来の文学》シリーズ完結記念トークショー@本屋B&B、行ってきました。途中から雷と大雨の音が聞こえてきて怖かったです。傘持ってきてなかったし!! 以下レポ。 ※注意:以下、基本的に敬称略だったり付けてたり。オフレコっぽい箇所(…

唖然とするような怪作と歴史的名訳との臨界点——アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』

ゴーレム 100 (未来の文学) 作者:アルフレッド ベスター 国書刊行会 Amazon 怪作である。真っ赤な表紙とぶ厚めの背表紙。過剰なまでのタイポグラフィと、ロールシャッハ・テストを思わせる不可思議な挿画たち。何しろ開始二〇ページ目から出てくるのがヘブラ…

現実認識を変えるために脳6つを要求する異星人を巡る、異色言語SF――イアン・ワトスン『エンべディング』

エンベディング (未来の文学) 作者:イアン・ワトスン 国書刊行会 Amazon バベルの塔の崩壊以来、言語の統一は人類の悲願である。だからこそ人類は、「言語」という謎めいた、しかしありふれたものについて学術的興味を抱き続けてきた。本作で下敷きにされて…