機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

柴田元幸編アンソロジー

諦念と哀しみ、そしてユーモア――『いずれは死ぬ身』

いずれは死ぬ身 作者:柴田 元幸 河出書房新社 Amazon 雑誌『エスクァイア 日本版』に翻訳連載された作品群の後半(前半は『夜の姉妹団』としてまとまっている)と、その他別の雑誌等に単発的に訳された作品を集めたアンソロジーである。こう聞くと「どうせ寄…

旅にまつわる海外短編アンソロジー――『紙の空から』

紙の空から 晶文社 Amazon 「地上で読む機内誌」をコンセプトに、世界各地の自然や文化を紹介する雑誌〈PAPER SKY〉に翻訳連載された短編を集めたもの。旅にまつわる小説を、との編集部の提案で始まった連載だが、「その都度その都度面白いと思った作品を選…

不思議な浮遊感漂う現代アメリカ幻想小説傑作集――『どこにもない国 現代アメリカ幻想小説集』

どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集 松柏社 Amazon 柴田元幸が紹介する作品には、大まかに二通りの類型がある。スチュアート・ダイベックに代表される地味ながらしっとりとした叙情に満ちたリアリズム小説と、スティーヴン・ミルハウザーに代表される幻…

読者の"愛"の概念を拡張するアンソロジー――『むずかしい愛 現代英米愛の小説集』

むずかしい愛―現代英米愛の小説集 朝日新聞社 Amazon 「○○ってなんだろう」と、ある概念について考える時の一つの方法として、「極端な具体例を考えてみる」というものがある。例えば「SFってなんだろう」と考える時に、妙な科学技術が出てこないにもかか…

「異人」としての老人を描いた特異なアンソロジー――『いまどきの老人』

いまどきの老人 朝日新聞社 Amazon 現実における「老い」の問題はたいてい悲観的だ。肉体的な衰え、介護問題、子や孫との確執、安楽死問題……。少年には無限の可能性がある(かもしれない。そうとも限らない)が、老人には「死」という歴然とした結末が可視範…

奇跡じみた打率の傑作アンソロジー――『夜の姉妹団 とびきりの現代英米小説14篇』

夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇 作者:ミルハウザー,スティーヴン,ヨッセル,ミハイル,ダイベック,スチュアート,ブラウン,レベッカ 朝日新聞社 Amazon 奇跡じみた打率の一冊である。副題に添えられた「とびきりの現代英米小説」という惹句に偽りはない…

Worryしっぱなしのトラウマ少年小説集――『Don't Worry Boys 現代アメリカ少年小説集』

Don't worry boys―現代アメリカ少年小説集 大和書房 Amazon 柴田元幸といえば少年小説……という気がしなくもない。本書に加えてもう一冊少年小説アンソロジーを編んでいるし(『昨日のように遠い日』)、少年小説の定番『トム・ソーヤの冒険』『ハックルベリ…

奇想あふれる柴田元幸第一アンソロジー――『世界の肌ざわり 新しいアメリカの短編』

世界の肌ざわり―新しいアメリカの短篇 (新しいアメリカの小説) 白水社 Amazon 本書は柴田元幸編アンソロジーにとっての——柴田元幸氏そのものにとってのと言ってもいいだろう——記念碑的一冊である。というのも、柴田氏の翻訳家人生の始まりが白水社の叢書《新…

芥川×現代英米翻訳家オールスターで送る、今なお通用する怪異譚集――『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』

芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚 発売日: 2018/11/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) 芥川龍之介が三十五年の生涯で残したものはあまりに多い。彼は古典文学を換骨奪胎し自らの作品として現代に蘇らせる器用さと、自らの精神状態の悪化をそのまま映し出し…

「二重写しの世界」から見る、少年少女のヴィジョン――柴田元幸編『昨日のように遠い日 』

少女少年小説選 昨日のように遠い日 発売日: 2009/03/26 メディア: 単行本 少年小説アンソロジー第二弾。初出は雑誌「飛ぶ教室」の《特集=柴田元幸の “飛ぶ教室” 的文学講座》。あとがきには「少年小説にあたっては(中略)、『我々はつねに、少年にいま見…

恋愛、そして破滅――柴田元幸編『燃える天使』

燃える天使 (角川文庫) 作者:柴田 元幸 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2009/10/24 メディア: 文庫 ◆ジョン・マッギャハン「僕の恋、僕の傘」 訳し下ろし→『男の事情 女の事情(国書刊行会) ◆V・S・プリチェット「床屋の…