機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

2020-01-01から1年間の記事一覧

やや時期は逸しましたが……(同人誌が雑誌『文學界』で紹介されました)

先日発売された雑誌『文學界』1月号の「特集:文學界書店」内にて、8月に頒布した同人誌『カモガワGブックスVol.2』が紹介されていました。 ご紹介頂きました伴名練先生、ありがとうございます。小林恭二作品や石黒達昌作品と自分たちの本が並んでいるのを見…

家に発電所を作り、世界の輪廻に取り込まれる――奇想小説ファンに勧める現代漫才3選

奇想の住まう場所 なぜ漫才なのか? 奇想の在処を探る ①気が付けば世界の輪廻に取り込まれている話――Dr.ハインリッヒ「トンネルを抜けると」 ②プリクラ撮りたさに家を火力発電所にする話――金属バット「プリクラ」 ③変な暗記法・言葉遊び系漫才の最前線――カベ…

プロフィール

自己紹介 鯨井久志(くじらい・ひさし) Hisashi Kujirai 1996年生まれ。大阪府出身。京都大学SF・幻想文学研究会OB(2020年度まで)。 海外文学やSFにまつわる同人誌『カモガワGブックス』の主宰をしている(共同)。本業は研修医→精神科医もどき。 SFやラ…

年刊Komiflo傑作選(2020年)を編む

※注意 以下の記事では成人向け漫画についての記述があります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。 サブスクって便利ですよね。NetflixとかAmazonプライムとか。最近はUberEatsも月額制のプランを始めたらしいですよ。 ただ、サブスクの欠点といえば、月…

芥川×現代英米翻訳家オールスターで送る、今なお通用する怪異譚集――『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』

芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚 発売日: 2018/11/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) 芥川龍之介が三十五年の生涯で残したものはあまりに多い。彼は古典文学を換骨奪胎し自らの作品として現代に蘇らせる器用さと、自らの精神状態の悪化をそのまま映し出し…

歴史と虚構の境界を辿る、メタフィクショナルな政治小説――マリオ・バルガス=リョサ『マイタの物語』

マイタの物語 (フィクションのエル・ドラード) [ マリオ・バルガス・ジョサ ]価格: 3080 円楽天で詳細を見る ラテンアメリカ文学を語る上で政治の話は欠かせない。ガルシア=マルケスをはじめ、コルタサルやフエンテスなど、多くの作家が政治的な趨勢への反…

「二重写しの世界」から見る、少年少女のヴィジョン――柴田元幸編『昨日のように遠い日 』

少女少年小説選 昨日のように遠い日 発売日: 2009/03/26 メディア: 単行本 少年小説アンソロジー第二弾。初出は雑誌「飛ぶ教室」の《特集=柴田元幸の “飛ぶ教室” 的文学講座》。あとがきには「少年小説にあたっては(中略)、『我々はつねに、少年にいま見…

失われた短編を求めて――ボルヘス唯一の未訳短編「シェイクスピアの記憶」について

ホルヘ・ルイス・ボルヘス。アルゼンチンが生んだ二〇世紀の世界文学上最大の作家の一人で、「知の工匠」「迷宮の作家」等の異名を持つ巨匠である。日本でも大変人気があり、現在では岩波文庫に著作の多くが収録されている。 さて、彼の作風の最大の特徴は、…

恋愛、そして破滅――柴田元幸編『燃える天使』

燃える天使 (角川文庫) 作者:柴田 元幸 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2009/10/24 メディア: 文庫 ◆ジョン・マッギャハン「僕の恋、僕の傘」 訳し下ろし→『男の事情 女の事情(国書刊行会) ◆V・S・プリチェット「床屋の…