上の記事の補足記事です。
C94で海外文学レビュー同人誌出します。スペースは日曜西こ30b。京大SF研ブースで委託という形です。
頒布するのは『カモガワGブックス』(略称:KGB)という同人雑誌の創刊号で、今回は《非英語圏文学特集》。載るのは、イタリア語・スペイン語・フランス語etcといった非英語で書かれた文学作品のレビュー/評論。
具体的には、叢書全レビュー×2と評論×4です。
叢書全レビューは、
- 《フィクションのエル・ドラード》全レビュー(ラテンアメリカ)
- 《東欧の想像力》全レビュー(東欧)
評論は、
- 谷林守「レイナルド・アレナスを概観する」(ラテンアメリカ)
- 空舟千帆「イタロ・カルヴィーノの生涯と作品」(イタリア)
- 西村トルソー「恋愛資本主義社会のミシェル・ウエルベック――革命、逃走、中断/静止」(フランス)
- FUMI/FLUIDE「骨のきわで書くということ――南部アフリカ女性文学論――」(アフリカ)
が載ります。
92ページ、B5版、500円です。BOOTHにて通販もやってます(https://hanfpen.booth.pm/items/1476651)。
その他、福岡の本のあるところajiroさま、京都の誠光社さま、古書善行堂さま、東京・下北沢の本屋B&Bさまでも取り扱って頂いています。
以下、記事ごとの説明。
《フィクションのエル・ドラード》全レビュー
寺尾隆吉氏編集で水声社から現在も刊行中のラテンアメリカ文学叢書《フィクションのエル・ドラード》。
ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』やマリオ・バルガス=リョサ『マイタの物語』、アレホ・カルペンティエール『方法異説』など、名だたる巨匠の作品もさることながら、本邦初紹介の作家の作品も数多く含む本叢書をまるっと全レビュー。
《東欧の想像力》全レビュー
ユーゴスラビア、チェコ、ハンガリーなど、東欧から生み出された文学作品を数多く収録する松籟社の叢書《東欧の想像力》の全レビュー。
ボフミル・フラバル、エステルハージ・ペーテル、ミロラド・パヴィチなど、既に本邦で紹介済の作家の作品あり、本邦初翻訳作家の作品ありと盛りだくさんの叢書をまるっと全冊レビュー。
谷林守「レイナルド・アレナスを概観する」
先日、第10回創元SF短編賞日下三蔵賞を受賞された谷林守氏(@notfromSakhalin)によるレイナルド・アレナス論。
未訳の〈ペンタゴニア〉五部作について触れつつ、アレナス作品の特徴やアレナス自身の生涯との関係について分析。アレナス作品の既読者はより深い理解を得られ、未読者でも思わずアレナス作品を手に取りたくなる、アレナス作品の魅力を伝える論説です。
※谷林氏には、《フィクションのエル・ドラード》全レビュー内のレイナルド・アレナス『襲撃』のレビューも執筆して頂いています。
空舟千帆「イタロ・カルヴィーノの生涯と作品」
イタリアが生んだ「文学の魔術師」ことイタロ・カルヴィーノ。
京大SF研OBにして会内きってのカルヴィーノ読み・空舟千帆氏による解説は、長編・短編小説は勿論のこと、エッセイや評論についても余さずカバー。カルヴィーノファン必読の、熱のこもった解説が読めるはず。
西村トルソー「恋愛資本主義社会のミシェル・ウエルベック――革命、逃走、中断/静止」
今年1月、「告白したらふられたので「その女の子のことを想って過去に作った短歌から選んだ158首」を紙に印刷して本人に渡したら1首ずつ感想をくれた話」という奇ッ怪な記事が1300ブクマ超とバズりにバズったトルソー(西村取想)氏によるウエルベック論。
「ウエルベックが描く、恋愛資本主義社会における革命と逃走、その失敗を、新反動主義・加速主義と『アンチ・ オイディプス』を補助線にして捉えていきたい」と本文にあるように、ウエルベック作品に頻出するテーマを、「加速主義」やドゥルーズ・ガタリ『アンチ・オイディプス』を絡めて論じる意欲作になっています。
普段のトルソー氏らしからぬ極めて真面目かつ重厚な論説で、編集しながら「俺は『ユリイカ』編集してんのか?」と思わずツッコんでしまった。ウエルベックの未訳詩の訳出付き。
FUMI/FLUIDE「骨のきわで書くということ――南部アフリカ女性文学論――」
京大詩人会所属の才媛による南部アフリカ女性文学論。
“Women Writing Africa The Southern Region”という南部アフリカ女性文学のアンソロジーを概観しつつ、未だ本邦では十分な紹介のされていない南部アフリカ女性文学について論じた力作(本当に、文芸誌のフェミニズム特集号に載っていてもおかしくないクオリティだと思う)。おまけで未訳詩2篇の訳出付き。
以上です。アジア圏の文学について触れられなかった悔いはありますが、それは次回以降に回すとして。何卒宜しくお願いします。