機械仕掛けの鯨が

読んだ本の紹介など。書いてる人:鯨井久志

2023年上半期面白かったお笑いのネタ10選

今年から足しげくライブに通うようになって、いろいろと生でネタを見る機会も増えたので、自分のための備忘録も兼ねて10選を選んでみました。順不同。ネタバレはしないようにしております。

 

十九人「寿司屋」

いま一番シーンで熱い男女コンビと言っても過言ではない十九人。ボケのゆッちゃんwの狂気的なパフォーマンスと、それを見守りつつも振り回されるツッコミの松永くんのコンビネーションが唯一無二のグルーブ感を生み出す期待株。

どのネタもだいたい面白いが、メタ的な構造でありながらそれを一切感じさせないまま走り続けるゆッちゃんwの演者としての力と、オチ周辺の「仕掛け」(動き、と言ったほうがいいかな?)がインパクト大なのでこれを。

初見の人にはYou Tubeに上がってる「ツチノコ」か「ワニさんのベンチ」がおすすめ。


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5月にあったK-PRO協賛の主催ライブ「十九人のブレナイ」は出演する他の芸人も含めて、十九人の集大成的なライブで、今年一番よかった。

ダウ90000「バー」

男女混成の8人組という異色の構成で、昨年のABCお笑いグランプリではコントなのか演劇なのか論争を一部で巻き起こした大注目のコントグループ。

日常の些細な振る舞いを切り取り、そこから細かい変化を付けつつ大きな笑いのうねりを作りだしていく作劇術は、他に類を見ない美しさ。その中でも「バー」のネタは、本演劇公演『また点滅に戻るだけ』でもフィーチャーされた「何気ない癖」に着目したネタ。6月のグレイモヤ大阪の大トリで掛かっているのを見たが、その日一のウケだった。

街裏ぴんく「あとひとおし」

どこまで行っても虚構でしかないウソ話を、いかにも見てきたような迫真の語り口で演じる奇才漫談家街裏ぴんく。その語り/騙りのテクニックは、大汗をかきながら全力で演じる姿を生で見るともう迫力満点。絶対に売れるべきだし、奇想小説ファンの方面にも見つかってほしい芸人のひとり。

「あとひとおし」は、突如街中で怪しい男に捕まった街裏ぴんくが、「あとひとおし」で爆笑に達しそうな男の「ひとおし」を依頼される……という筋書きで、後半の時空が入り混じるなかで登場するオールスターキャストの見せ方が感動的。ちょっと「バンドウがいた夏2」の感動に近いものがある。「聖域ライブ」のトリで披露したときは、オチのタイトル回収も含めて鮮やかな1本だった。

omocoro.jp

三遊間「内田真礼

関西の若手しゃべくり漫才師。真空ジェシカマヂカルラブリーなどがネットミームをネタの一部に取り入れ始めたのはここ最近だが、三遊間の取り込むそれは、真空やマヂラブよりも更に一世代若い印象を抱く。YouTubeに不正アップロードされた動画や少年漫画のR-18同人誌あるあるだけで1本ネタが作れてしまう技量もすごい。

内田真礼」はその名の通り、声優の内田真礼を題材にした1本。絶妙な見栄と意地のあるあるをしゃべくり1本で展開していく熱量がすばらしい。

TCクラクション「動物」

TCクラクションはとにかくツッコミの坂本No.1の発声とキレが最高。それだけでも面白いのだが、TCクラクションの良いネタは、ボケの古家曇天の変な発言に巻き込まれる形で、ツッコミのフレーズも奇妙なものにどんどん変わっていって、それ自体がおもしろくなっていくところ。「動物」はその良さがふんだんに出た1本。「エバースのトリプルヘッダー」で見た時は、周囲の芸人からも「ここで出していいネタじゃない!」と絶賛されていた。

youtu.be

めっちゃ最高ズ「授業参観」

恥ずかしながら「十九人のブレナイ」で初めて見たのだが、振り切ったような全力コント漫才と、終盤のバイオレンスな展開で一気に心奪われた男女コンビ。「授業参観」は「十九人のブレナイ」で掛けられたネタだが、ツッコミが役割を変えつつ同じくだりを複数回繰り返す構成もちょっと目新しくてよかった。

春とヒコーキ「お化け」

YouTubeでの「バキ童」としての活動があまりにも有名だが、コントの評価も高いコンビ。「お化け」は中盤でのバラシ(とあるインターネットミーム絡み)も面白すぎるのだが、オチの衝撃的な展開といい、忘れがたい印象を残す1本。

ゼンモンキー「墓参り」

若手注目株のトリオコント師。「墓場で登場人物のXX同士が戦う」という設定自体がかなり面白いのだが、最終盤まで二人の演技力で持たせつつ、オチで3人目をうまく使う構成もすばらしい。

こたけ正義感「歌詞のリーガルチェック」

弁護士と芸人の二刀流という唯一無二のピン芸人。タイトルが示す通り、ある曲を流しつつ、その歌詞を弁護士的にツッコんでいくという構成のネタなのだが、他の誰にもできない着眼点と、歌だからこそ生まれる天丼的な展開が笑いを増幅させる。あの歌を題材に選んだのもすごい。たぶん今週末のABCお笑いグランプリで掛けるはず。

おもちゃのチャチャチャ「女性器」

一番の問題作。女性器の名前を連呼しつつ、M-1で披露された名作漫才をカバーしていくという、地下ライブでしか決して許されないクレイジーなネタ。しかしそのカバーのしどころが面白すぎて、最初引いていた客もどんどん掴まれて最終的は大ウケしてしまうという恐ろしい1本。笑いの価値観を揺さぶられました。個人的にはシンクロニシティの3文字のネタをド下ネタで上書きしていくところが最高だった。

 

 

いやはや。下半期もどんどん劇場に足を運んでいきたいところです。